サキタリ洞


世界最古の釣り針発見を伝える沖縄タイムス紙のトップ記事


平成28年9月19日 、沖縄県立博物館は南城市のサキタリ洞(どう)遺跡から、 世界最古(注1)となる2万3000年前の貝製の釣り針が出土した、と発表しました。これまで国内で確認された釣り針は縄文時代以降のものしかなく、旧石器時代のものは初めての発見でした。

サキタリ洞は、南城市玉城字前川の「ガンガラーの谷」(注2)というところにあります。この洞窟の周辺地域では、少なくとも3万年前くらいから人が住んでいたと考えられており、平成26年12月には、人為的に埋葬された可能性のある9000年以上前の人骨が発見されています。

また、「ガンガラーの谷」内にある「武芸洞」入り口付近では、縄文時代晩期(約3千年前)と考えられる石棺墓(注3)一基が発見され、中からは保存状態の良い大人の人骨一体と子どもの人骨一部が確認されました。 石棺墓は、沖縄では読谷村や宜野湾市の遺跡2カ所で発見されていますが、洞穴内から発見されたのは初めてでした。洞穴内では、縄文時代前期(約6千年前)の爪形文土器も南部地域で初めて出土しており、石棺近くに火をたいた炉の跡もありましたので、武芸洞は、生活場や墓域として利用されていたようです。

このほかにも周辺には先史時代の遺跡が多く分布しています。有名なものとして、港川人骨が発見された港川フィッシャー遺跡(八重瀬町)とは1.5kmしか離れていません。また、サキタリ洞では3万年前の幼児人骨も発見されました。これは日本国内で山下町第一洞穴人(注4)に次いで古いものです。

なお、サキタリ洞の意味ですが、サキとは酒の意味らしく、酒が垂れる、つまり酒を造っていた洞窟という意味のようです。酒を蒸留して造ることを八重山では“サキタリ”(酒垂れ)といったそうです。沖縄言語研究センターによると、今はほとんど使われていない言葉だそうです。



サキタリ洞入口は喫茶店になっている。傘は滴除け 洞内の鍾乳石
釣り針が発見された調査区Ⅰと呼ばれている区画 幅は約14ミリの発見された釣り針

(注1)世界最古の釣り針…これまで見つかっているなかで最も古いと考えられている釣り針は、パプアニューギニアの1万8000年前のものですので、サキタリ洞の釣り針は、それより5000年も古い地層から発見されました。

(注2)ガンガラーの谷…数十万年前までは鍾乳洞だった場所が崩れてできた亜熱帯の森。約2万2000年前に生きていた「港川人」の居住区としての可能性も高く、今も発掘調査が行われています。考古学的・民族学的にも価値あるところです。入場料は一人2,200円です。前日までに予約が必要です。森の中を1キロ歩きます。名前のいわれは、洞穴に石を落とすと「ガン、ガン、ガラー、ガラー」と音が反響したから名付けられたとか。現地の案内人がそう言っていましたが、ホントなのか冗談なのか分かりません。ゴダイゴのヒット曲で有名な古代の王国「ガンダーラ」とは、何の関係もないようです。

(注3)石棺墓…縄文時代の終わり頃から弥生並行時代頃に見られます。地面に掘った穴に石で囲いを作り、上から石で蓋をしたものです。

(注4)山下町第一洞穴人…昭和43年に那覇市山下町の山下町第一洞穴遺跡から発見された約3万2000年前の旧石器時代の化石人骨。

武芸洞から発見された石の棺と埋葬された人骨


本文は、沖縄博物館学芸員コラム、「ガンガーラの谷」配布資料を参考に作成。トップの新聞および釣り針の写真は沖縄タイムス、人骨の写真はHP「ガンガーラの谷」からお借りしました。


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